便秘に効く食べ物&便秘を解消する食事のコツ
多くの女性が悩む便秘ですが、実際は女性だけでなく男性も便秘に悩む人が少なくありません。株式会社サン・クロレラが公開した「お通じに関する実態調査」によると、女性の2人に1人、男性の4人に1人が「よく便秘になる」「たまに便秘になる」と答えています。
またこの調査では同時に、食べ物による便秘の解消法が最も人気であることが分かっています。便秘は病院にいけば即治るというものではなく、生活習慣を改善することが必須です。中でもとりわけ影響が大きいのが食事ですから、食改善の意識を保つことは便秘解消にとってとても大切なことです。
このページでは、まず便秘を解消するための食事のコツを確認し、その後便秘に効く食べ物を挙げていきたいと思います。
便秘解消のための食事のコツ
よく噛んで食べる
「よく噛んで食べよう」といわれるともう耳にタコができていて、つい「はいはい」と軽視してしまう人も多いのではないかと思います。しかし、「ちゃんと噛むようにしたら便秘が治った」という話は結構あるので、決して軽視することはできません。
食べるときによく噛むようにすると食べ物が唾液と混ざり、消化吸収しやすい状態になります。さらに副交感神経を刺激して唾液の量が増え、それがきっかけとなって腸の蠕動(ぜんどう)運動が活発化し、便通を促してくれます。
特に現代人は咀嚼不足といわれており、ちゃんと噛まないで食べることが様々な健康問題に繋がっていることが指摘されています。便秘もそのうちの一つです。特に普段噛むことをあまり意識していない方は、よく噛むことを意識するだけで便秘が改善・解消する可能性があります。
水分をしっかり摂る
水分は腸の蠕動運動を活発化する働きがあります。松生クリニックの松生恒夫院長は著書「排便力をつけて便秘を治す本」の中で、水を飲むと腸の蠕動運動が活発化することを示す実験について説明しています。大腸内視鏡検査を受ける患者さんに許可を得て、上行結腸に4℃以下の冷水を入れた結果、すぐに蠕動運動が活発になったのを確認したそうです。
また、水分は便をやわらかくする働きもあります。松生院長は1日あたり1.5~2リットル摂ることを推奨しています。
規則正しい食事で体内時計の働きを最適化する
人間の体には時計遺伝子というものが存在します。これは体内時計(概日リズム)を管理しているもので、全身の細胞ひとつひとつに存在し、時計のように時間を刻みながら体の管理を行う働きをしています。
1日3食の食事を規則正しく行うようにすると、体内時計の働きによって腸の働きも規則的になり、決まった時間に便通が起こりやすくなります。
寝る3時間前までに食事を済ませる
寝る前はできるだけ胃腸を空にしておくことが効果的です。胃腸が空になると「モチリン」というホルモンの働きが活発になります。モチリンには胃腸の掃除をする働きがあり、胃や腸内の内容物を肛門側へ送り出してくれます。寝ている間にモチリンがそうして働くことで、翌朝の排便の準備が整うわけですね。
便秘に効く食べ物
食物繊維
食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維という大きく分けて2種類があります。水溶性食物繊維には「便をやわらかくする」「腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整える」などの働きがあり、不溶性食物繊維には「腸内で膨らんで腸壁を刺激し、蠕動運動を高める」「有害物質を吸着し、体外に排出する」などの働きがあります。
便秘解消のためには、この2種類をバランスよく摂る必要があります。松生院長は「水溶性:不溶性=1:2」の割合を推奨しています。自身の行った実験において、水溶性食物繊維7g、不溶性食物繊維14gの割合が、排便において最も良好な結果が得られたのだそうです。
ちなみに厚生労働省は「食事摂取基準2010年版 [PDF]」で1日の食物繊維目標量を、男性19g、女性17gとしていますが、これは心筋梗塞で死亡する確率がある程度抑えることができるという意味であり、便秘解消のための目標値ではありません。またNIH(アメリカ国立衛生研究所)は1日20~35gの摂取を推奨していますが、水溶性と不溶性の割合については触れていないようです。
以下の表は可食部100gあたりの食物繊維含有量とカロリーをまとめたものです。数値は文科省の五訂増補日本食品標準成分表から引用しました。
食物繊維の豊富な食べ物例
食べ物 | 100gあたりの 食物繊維 総量 (g) |
水溶性 食物繊維(g) |
不溶性 食物繊維(g) |
カロリー (kcal) |
|
米類 | 玄米 | 3.0 | 0.7 | 2.3 | 350 |
胚芽精米 | 1.3 | 0.3 | 1.0 | 354 | |
精白米 | 0.5 | 0 | 0.5 | 354 | |
パン類 | ライ麦パン | 5.6 | 2.0 | 3.6 | 264 |
フランスパン | 2.7 | 1.2 | 1.5 | 279 | |
食パン | 2.3 | 0.4 | 1.9 | 264 | |
ロールパン | 2.0 | 1.0 | 1.0 | 316 | |
クロワッサン | 1.8 | 0.9 | 0.9 | 448 | |
麺類 | そば(ゆで) | 2.0 | 0.5 | 1.5 | 132 |
スパゲッティめん(ゆで) | 1.5 | 0.4 | 1.1 | 149 | |
中華めん(ゆで) | 1.3 | 0.5 | 0.8 | 149 | |
そうめん(ゆで) | 0.9 | 0.3 | 0.6 | 127 | |
うどん(ゆで) | 0.8 | 0.2 | 0.6 | 105 | |
野菜 | ごぼう(ゆで) | 6.1 | 2.7 | 3.4 | 58 |
オクラ(ゆで) | 5.2 | 1.6 | 3.6 | 33 | |
ぶなしめじ(ゆで) | 4.8 | 0.2 | 4.6 | 21 | |
にら(ゆで) | 4.3 | 0.8 | 3.5 | 31 | |
さつまいも(蒸し) | 3.8 | 1.0 | 2.8 | 131 | |
春菊(ゆで) | 3.7 | 1.1 | 2.6 | 27 | |
ブロッコリー(ゆで) | 3.7 | 0.8 | 2.9 | 27 | |
日本かぼちゃ(ゆで) | 3.6 | 0.8 | 2.8 | 60 | |
ほうれんそう(ゆで) | 3.6 | 0.6 | 3.0 | 25 | |
まいたけ(ゆで) | 3.6 | 0.2 | 3.4 | 17 | |
モロヘイヤ(ゆで) | 3.5 | 0.8 | 2.7 | 25 | |
たけのこ(ゆで) | 3.3 | 0.4 | 2.9 | 30 | |
マッシュルーム(ゆで) | 3.3 | 0.1 | 3.2 | 16 | |
カリフラワー(ゆで) | 3.2 | 0.7 | 2.5 | 26 | |
とうもろこし(ゆで) | 3.1 | 0.3 | 2.8 | 99 | |
にんじん(ゆで・皮むき) | 3.0 | 1.0 | 2.0 | 39 | |
さといも(水煮) | 2.4 | 0.9 | 1.5 | 59 | |
こまつな(ゆで) | 2.4 | 0.6 | 1.8 | 15 | |
青ピーマン(油いため) | 2.4 | 0.6 | 1.8 | 64 | |
れんこん(ゆで) | 2.3 | 0.2 | 2.1 | 66 | |
白ねぎ(ゆで) | 2.2 | 0.2 | 2.0 | 28 | |
大豆もやし(ゆで) | 2.2 | 0.3 | 1.9 | 34 | |
なす(ゆで) | 2.1 | 0.7 | 1.4 | 19 | |
じゃがいも(蒸し) | 1.8 | 0.6 | 1.2 | 84 | |
キャベツ | 1.8 | 0.4 | 1.4 | 23 | |
たまねぎ(ゆで) | 1.7 | 0.7 | 1.0 | 31 | |
ちんげんさい(ゆで) | 1.5 | 0.3 | 1.2 | 12 | |
白菜(ゆで) | 1.4 | 0.4 | 1.0 | 13 | |
レタス | 1.1 | 0.1 | 1.0 | 12 | |
フルーツ | アボカド | 5.3 | 1.7 | 3.6 | 187 |
ブルーベリー | 3.3 | 0.5 | 2.8 | 49 | |
キウイ | 2.5 | 0.7 | 1.8 | 53 | |
いちじく | 1.9 | 0.7 | 1.2 | 54 | |
びわ | 1.6 | 0.4 | 1.2 | 40 | |
りんご | 1.5 | 0.3 | 1.2 | 54 | |
いちご | 1.4 | 0.5 | 0.9 | 34 | |
もも | 1.3 | 0.6 | 0.7 | 40 | |
豆類 | いんげん豆(ゆで) | 13.3 | 1.5 | 11.8 | 143 |
あずき(ゆで) | 11.8 | 0.8 | 11.0 | 143 | |
えんどう豆(ゆで) | 7.7 | 0.5 | 7.2 | 148 | |
納豆 | 6.7 | 2.3 | 4.4 | 200 | |
枝豆(ゆで) | 4.6 | 0.5 | 4.1 | 134 | |
そら豆(ゆで) | 4.0 | 0.4 | 3.6 | 112 | |
海藻類 | わかめ(水戻し) | 5.8 | - (データ無) |
- | 17 |
めかぶ | 3.4 | - | - | 11 | |
もずく | 1.4 | - | - | 4 |
マグネシウム
国立健康・栄養研究所と女子栄養大学のグループが発表した研究によると、マグネシウムの摂取量が少ない人たちは便秘が多いという結果が出ています。元々マグネシウムは下剤にも使われている成分で、便をやわらかくする働きがあります。しかし逆に摂り過ぎると今度は下痢を起こしてしまうので、過剰摂取にならないよう注意が必要です。
厚生労働省の食事摂取基準2010年版では、マグネシウムの推奨量は成人男性で350mg前後、成人女性で280mg前後となっています。国民健康・栄養調査結果(平成23年度) [PDF]を見ると、例えば30~39歳の男女で平均215mgしか摂れていないので、マグネシウムはやや不足しがちな栄養素といえます。今までマグネシウムのことを意識してこなかった方は、十分に摂れているかどうか一度確認してみてください。
マグネシウムが豊富な食べ物例
食べ物 | 100gあたりの マグネシウム (mg) |
カロリー (kcal) |
ながこんぶ(素干し) | 700 | 140 |
ほしひじき | 620 | 139 |
ごま | 360 | 599 |
さくらえび(素干し) | 310 | 312 |
焼きのり | 300 | 188 |
アーモンド | 270 | 606 |
きな粉 | 240 | 437 |
カシューナッツ | 240 | 576 |
ピーナッツ | 200 | 585 |
するめ | 170 | 334 |
くるみ | 150 | 674 |
わかめ(水戻し) | 130 | 17 |
ピスタチオ | 120 | 615 |
玄米 | 110 | 350 |
納豆 | 100 | 200 |
植物性乳酸菌
乳酸菌が腸内環境を整え、便秘解消に効果があることは有名です。しかし、乳酸菌には動物性乳酸菌と植物性乳酸菌の2種類があり、便秘解消には植物性乳酸菌が有効であることはご存知でしょうか。
「腸内細菌学」によると、動物性乳酸菌は胃や腸で死滅してしまう可能性が高く、対して植物性乳酸菌は酸に強く、生きたまま腸に届いて腸内環境を整えてくれます。植物性乳酸菌の腸内生存率は、動物性乳酸菌の10倍あるとのことです。
植物性乳酸菌は植物が原料となった発酵食に多く含まれています。食事だけで足りない場合はサプリメントもあります。また、植物性乳酸菌には特に摂取量の上限はありませんが、塩分などの摂り過ぎにはならないようご注意ください。
植物性乳酸菌の豊富な食べ物例
味噌、キムチ、漬け物全般、しょうゆ、日本酒、植物性乳酸菌で作られたヨーグルトなど
オリゴ糖
元々オリゴ糖は、母乳がきっかけで発見されたものでした。母乳で育った赤ちゃんの腸内にはビフィズス菌(善玉菌)が多いのに対して、粉ミルクで育った赤ちゃんには大腸菌が多く、病気にかかりやすいことが問題になっていました。その後研究が進み、オリゴ糖が母乳中のビフィズス菌を増やしていることが分かったのです。便秘解消のためにも、オリゴ糖を摂ってビフィズス菌を増やし、腸内環境を整えることはとても効果的です。
厚生労働省のe-ヘルスネットによると、オリゴ糖の有効摂取量は1日あたり2~10gとしています。ただし、急にたくさん摂ると下痢を起こしたりお腹が張ったりすることがあるため、その場合は2~3回に分けて摂る、少しずつ量を増やしていく、などするとよいとしています。普通の食品以外にも、甘味料として販売されているものを利用するのもいいです。
オリゴ糖の豊富な食べ物例
ごぼう、アスパラガス、きな粉、ヤーコン、キクイモ、大豆、たまねぎ、コーヒー、にんにく、とうもろこし、納豆、はちみつ、豆乳など
ビタミンC
ビタミンCは腸に届いて乳酸菌のエサとなり、善玉乳酸菌を増やしてくれます。オリゴ糖もそうですが、こういった善玉菌を増やす成分は便秘解消に効果的です。
また、ビタミンCはストレスによって大量に消費されるという特徴があります。体はストレスが増すとそれに対抗するためにアドレナリンを分泌するのですが、このアドレナリンを生成するときに大量のビタミンCが必要になるのです。ストレス社会と呼ばれる現代は、よりビタミンCが不足しがちな社会といえます。
厚生労働省が定めたビタミンCの推奨量は、成人で1日あたり100mgです。食事だけでは足りないという方は、サプリメントを使うという手もあります。
ビタミンCが豊富な食べ物例
食べ物 | 100gあたりの ビタミンC (mg) |
カロリー (kcal) |
グアバ | 220 | 38 |
焼きのり | 210 | 188 |
赤ピーマン(油いため) | 180 | 73 |
黄ピーマン(油いため) | 160 | 70 |
パセリ | 120 | 44 |
アセロラ(10%果汁入り飲料) | 120 | 42 |
青ピーマン(油いため) | 79 | 64 |
めんたいこ | 76 | 126 |
ゴーヤ(油いため) | 75 | 53 |
甘がき | 70 | 60 |
キウイ | 69 | 53 |
いちご | 62 | 34 |
カリフラワー(ゆで) | 53 | 26 |
パパイア | 50 | 38 |
レモン(果汁) | 50 | 26 |
オレイン酸
オレイン酸には乳化作用で腸内物をやわらかくし、排便を促す働きがあります。例えばオレイン酸が主成分であるオリーブオイルは古くから天然の下剤として知られており、イタリアでは便秘予防として子供にスプーン1杯のオリーブオイルを飲ませる習慣があるそうです。
松生院長は1日に大さじ1~2杯(15~30ml)のエキストラ・バージン・オリーブオイルを摂ることを推奨しています。
オレイン酸が豊富な食べ物例
オリーブオイル、サフラワー油、なたね油、ひまわり油、ごま油、調合油、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツ、アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツ、ピーナッツなど