外反母趾の原因と治し方 手術なしで治し、痛みをとるには

外反母趾が体のあらゆる不調の原因になることは、ご存知でしょうか。もしひざ痛や腰痛、肩こり、偏頭痛、自律神経失調症などの症状で悩んでいる方は、ひょっとしたらそれは外反母趾が原因かもしれません。

現代は外反母趾の人が激増しており、笠原接骨院の笠原巖院長によると、女性の3人に1人が外反母趾なのだそうです。

大人だけでなく子供にも多いので、子供を持つ方は自分の子供の健康を守るためにも、外反母趾の原因と治し方を知っておく必要があります。

 

外反母趾はあらゆる症状の元凶

外反母趾の恐ろしさは、体のありとあらゆる歪みを引き起こしてしまうことにあります。足が痛いだけでは済みません。

ちょっと積み木のことを考えてみてください。

積み木は土台となる下部分がしっかりしていれば上も安定して積むことができます。しかし、下がズレているとバランスを取るために上もズレることになり、結果全体がズレてしまいますよね。

外反母趾と積み木の原理

実は、外反母趾の場合もこれと同じことが起こっているのです。

人間の体の土台である足元に外反母趾という歪みがあると、その不安定を体の上部で調整することになります。

その結果骨格や関節の歪みが生じ、O脚、ひざ痛、下半身太り、骨盤のズレ、腰痛、側弯症、猫背、肩こり、顎関節症、顔の左右差、偏頭痛、めまい、自律神経失調症など、ありとあらゆる症状を引き起こすことになってしまうのです。

体の美と健康を守るために重要なことは、まず土台である足元の歪みをとること。言い方を変えれば、外反母趾という土台の歪みを治すことで、足の痛みだけでなく体に起こっていた様々な症状が改善する可能性があるのです。

外反母趾のメカニズム

笠原院長は、外反母趾をテコの原理で次のように説明しています。

外反母趾の原理親指が小指側に押されて曲がる力が「力点」となり、親指の付け根部分である母趾球部が「支点」となって開き、出っ張ってしまいます。さらにそのことで力が「作用点」となる第5中足骨基底部に流れ、足裏全体が不安定となるのです。またその結果、本来足裏になければならない「アーチ」が消えてしまいます。

外反母趾と足裏のアーチ

人間の健康な足裏には上図のようなアーチが存在します。A-Bの横アーチ、A-Cの内側縦アーチ、B-Cの外側縦アーチですね。

これらアーチがしっかりできているうちは地面からの衝撃や体重による荷重から足を守ることができるのですが、足をしっかり使わずに筋力が落ちたりするとアーチが徐々に消えていってしまい、アーチが消えると負荷が偏って外反母趾が悪化します。するとさらにアーチが消えていく・・・という風に、負の連鎖が起こってしまうのです。

外反母趾を治すためには、足裏のバランスを整え、筋肉を鍛え、アーチを作ることが不可欠です。 

外反母趾の自己診断

自分の足の外反母趾がどの程度のものなのかをチェックするには、外反母趾角 (HV角)と第1-第2中足骨間角 (IM角)を測ります。

以下の図のように、HV角とは第1中足骨と親指の角度、IM角とは第1中足骨と第2中足骨の角度のことです。

外反母趾角(HV角)と第1-第2中足骨間角(IM角)

東京ボディセラピストサロン・山田光敏院長の著書「かんたんストレッチで外反母趾・巻き爪が治る本」によると、このHV角・IM角によって外反母趾の重症度が以下のように分類されます。

【HV角】
15°未満・・・正常
15~25°未満・・・軽症
25~40°未満・・・中程度
40°以上・・・重症

【IM角】
10°未満・・・正常
10~15°未満・・・軽症
15~20°未満・・・中程度
20°以上・・・重症

また山田院長は、「経験上IM角が15°を超えると改善が難しく、20°を超えると外科手術を受けた方がよい場合も多くなる」と述べています。

外反母趾の原因

歩き方

最近はヒールやパンプスなどの足を圧迫する靴を履いている大人だけでなく、小中学生の子供にも外反母趾が激増しています。

この最大の原因は、足の筋肉の未発達です。靴で足を覆い、足指を使って踏ん張らず、指のつけ根で歩いてしまうので足底筋群が発達せず、親指が曲がってしまうのです。

笠原院長によると、インドネシアの奥地に住む裸足で生活する人たちは足の指1本ずつが独立して力強く体を支えており、外反母趾がほとんど見当たらないそうです。

ゆるい靴やヒール、パンプスなど、「脱げやすい靴」は外反母趾の原因になります。脱げやすい靴を履いているときは、脱げないように無意識のうちに足指を上げたり、指を縮めて歩いてしまいがちだからです。

指の浮いた状態だと当然指の力が地面に伝わらず、その分親指のつけ根への衝撃が大きくなり、親指のつけ根の骨が出っ張る外反母趾になってしまいます。

また、先の細いヒールやパンプスなどの靴はさらに足を痛めつけます。先の細い靴は左右から親指と小指を圧迫し、足指の踏ん張る力を制限してしまうので、ますます筋肉が弱まり、外反母趾が悪化します。

運動不足

先ほども説明したように、外反母趾を起こさないためにはある程度の筋力が必要です。

ところが現代の日本人は運動不足の方が非常に増えています。健康の指針の一つである「健康日本21」によると、成人男性9,200歩・女性8,300歩を1日の歩数目安にしていますが、2011年の歩数調査では1日の平均歩数が男性7,233歩・女性6,437歩しかありませんでした。

これでは、足の骨格を保つための筋肉も落ちてしまい、外反母趾も悪化しやすくなってしまいます。

 

外反母趾の治し方 

ストレッチ・トレーニング

ストレッチで固くなってしまった関節をやわらかくし、筋肉が働きやすい状態を作れば、トレーニングによる筋トレ効果もより高まり、外反母趾を改善することができます。

ホーマン体操

左右の足の親指にゴムバンドをひっかけ、両足を扇形に広げるストレッチです。外反母趾の変形でかたくなってしまった親指の関節・周囲の筋肉・じん帯をやわらかくし、矯正を行いやすい状態にする効果があります。

 

筋トレではなくストレッチなので、親指の力を抜いて人差し指との間がしっかり開くようにします。

ちなみにゴムバンドがご家庭に無い場合は、輪ゴムを10本ほど束ねて代用することも可能です。

足裏のアーチを作るストレッチ

 

外反母趾を治すために欠かせない足裏のアーチを作るストレッチ法です。

他にも、外反母趾を治すためのストレッチやトレーニング法はたくさんあります。山田院長の著書「かんたんストレッチで外反母趾・巻き爪が治る本」や、外反母趾研究所・古屋達司代表の著書「超簡単足指トレーニングであきらめていた外反母趾が治った! 」の中では、外反母趾の重症度や目的別にストレッチ・トレーニングの方法が丁寧に説明されています。ストレッチやトレーニングによる治療をしてみようという方は、ぜひ一度手に取ってみてください。

テーピング

テーピングには、形を整えることで力点を解除し、支点と作用点をグッと押して足裏全体のバランスを整える効果があります。

これにより足指で踏ん張って歩けるようになるので、足の機能が回復し、これ以上歪みを悪化させないで済みます。

外反母趾のテーピングに関しては、テープの切り方、貼り方、 テープの購入、サポーターの使い方、テーピング後のケアの仕方など、全て笠原院長の公式サイトのページで詳しく解説されているので、そちらをご覧ください。

足に合った靴を選ぶ

どんなにセルフケアを頑張っても、靴が足に合わず、指を圧迫したり足を痛めつけてしまうのでは全て水の泡です。自分の足に合った靴を選ぶ必要があります。

山田院長は足に合った靴の選び方として、次のことを推奨しています。

・できるなら靴を履いて10分程なじませる
・少し歩く
・靴を脱いで、足の一部が赤くなっていないか確認。他にも、歩いていて足が痛んだり、足が疲れやすくなったり、足がむくみやすくなるなら、その靴は合っていない

また、笠原院長は靴選びのポイントをこう述べています。

・支点と作用点の部分に力が逃げないように補強してあり、靴の中で横幅が広がらないようになっているもの
・クッション性の高い靴底や人工筋肉素材(免震インソール)が使用してあるもの
・通気性がよくて歩きやすく、歩行能力や運動能力を高めてくれるもの

例えばAmazonや楽天だと、こんな靴が売っています。
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歩くときも立つときも足指を使う意識を持つ

外反母趾の人は足指にちゃんと力が入っていない状態で歩く傾向があるので、しっかり足指を使って歩き、足指の筋肉を鍛え、指のつけ根への負担を軽くすることが重要です。

また歩くときだけでなく、ただ立っているだけのときにも足指を使うことを心がけましょう。足指に体重がいかず、指のつけ根やかかとだけで立っている人は要注意です。

笠原院長は立ち方について、両ひざを軽く曲げて筋力で体重を支えることを推奨しています。ひざを曲げると前体重となり、足指で踏ん張れるように、負荷が分散し、筋肉を鍛えることもできます。

足指をしっかり使って歩いたり立ったりするようになると、すぐに足裏が筋肉痛になると思います。それはまさに筋肉が衰えている証拠であり、足指を使ってこなかった証拠です。これからは足指を使って筋肉を鍛え、足裏のバランスを取り戻していきましょう。

自分に合った歩き方を見つける

正しい歩き方に関しては諸説あり、「これだけが絶対に正しい」と決めるのは難しいです。

例えば走り方でいうと、「フォアフット(前足部)着地」と「かかと着地」、どちらがより足への負担が小さいのかという議論が続いています。これと同じように、歩き方に関してもどうやって着地するのがベストなのか、専門家の間で意見が割れているのです。

外反母趾の専門家の間でも、推奨する歩き方はそれぞれこんな風に異なっています。

【笠原院長】
・ひざを普段より1cm上げて歩く
・「かかと」「指のつけ根」「足指」の3点が同時に着地するよう、足裏全体で着地。ひざは伸ばしきらない
・適度なスピードと、自分に合った歩幅で歩く

【山田院長】
・下腹部を軽く引き上げ、上半身は軽く伸びをするようにする
・一本の線をかかとの内側と親指で踏むようにし、つま先は進行方向に向ける
・足はひざから出す
・腕の振りはひじが胴体の幅を超えないようにする
・歩幅は自分の足一つが目安
・かかとから着地。ひざは伸ばしきらない。あまり音がしないように(音がするのは効率が悪い証拠)。
・後ろ側の足は地面を蹴らないようにひざを前に出すようにする

【古屋代表】
・かかとから着地。かかとが着くときにひざがまっすぐ伸びるようにする
・足指に体重を乗せるとき、指の裏全体で接地するようにする
・後ろ側の足は地面を親指で蹴るようなイメージ。後ろの人に足裏を見せるような意識で。
・上半身の重心をやや前方にして腰から歩くイメージ

というわけで、歩き方についてはいろいろ試してみて「これが自分に合うかな」と思う方法で良いのではないかと思います。ちなみに私は山田院長の推奨する歩き方が最も合うような気がして採用しています。

運動不足を解消する

普段から運動不足を感じている方は、意識して少し多めに歩くようにしてみるとか、いつもより少し早歩きをするなど、ちょっとずつでいいので運動量を増やしていくようにすれば足裏や周りの筋肉が鍛えられ、足の骨格をしっかり支えられるようになります。 

重い外反母趾は専門医で診てもらう

外反母趾はストレッチやトレーニング、テーピング、生活習慣の改善などによってかなり改善することができますが、本当に重い外反母趾の場合は改善が難しい場合もあります。

その場合は外科手術の検討をするためにも、一度専門医に診てもらう必要があります。山田院長は外反母趾に関して、「ストレッチを3か月行っても症状が緩和しない場合は専門家の手を借りても良いと思う」と話しています。

ただし外反母趾の手術は確実に成功するとは限らず、治らない場合や悪化する場合すらあります。まずはストレッチやトレーニング、テーピングなどで改善をはかり、手術はあくまで最終手段として捉えておくのが良いと思います。