痔を治療するために知っておきたい10のコト 手術なしで治すには

日本人の3人に1人がかかっているといわれる「痔」。痔を「恥ずかしい」と思い、病院に行かず、治すことができずに悩んでしまう人が多いといわれています。

しかし痔は大腸がんと間違う危険がある上に、悪化することでがん化することもある危険な病気です。治療せずに放っておくわけにはいきません。

今回は痔について「これは知っておくべき」ということについてまとめてみたいと思います。

 

1. 痔はとてもメジャーな病気

株式会社キューライフが2011年7月12日に発表した「痔の調査結果(PDFファイル)」というのがあります。これによると、全国5,779人中、痔の経験者は男75.7%、女74.5%だったそうです。皆さんの周りの人たち(家族、恋人、友人、会社の同僚、上司、部下、得意先など)の顔を思い浮かべてください。その4人に3人は痔を治療したことがある、あるいは今も痔で悩んでいるということになるのです。

つまり痔は人間にとってそれだけメジャーな病気であり、男女限らず多くの人が痔になる運命にあるのです。よって痔で病院に行くのも至って当たり前のことで、決して変なことではありません。まずはこのことを知っておくことが大切だと思います。

2. 肛門の異常があったらすぐ診察を

痔のとても厄介なところは、大腸がんを見過ごしやすくなることです。

大腸がんは肛門からの出血や血便といった症状が出ますが、これを「どうせ痔だろ」と思い込んで放置してしまい、その結果がんの発見が遅れてしまうというケースが多いのです。

血を見ただけでは、それがどこからの出血なのか素人では判断できません。ですから、肛門からの出血や血便があったときは、すぐに肛門科か消化器内科を受診する必要があります。

また、痔瘻(じろう)や絨毛腫瘍(じゅうもうしゅよう)など、痔関連の病気からがんになってしまうこともあります。肛門の痛みが長く続いたり下着が分泌物で汚れたりしたらやはり専門医に診察してもらい、同時に大腸がんの検査を受けることも必要です。大腸がん検診は一般的に、40歳を過ぎたら2年に1回は受けることを薦められています。

先ほどのキューライフの調査結果によると、痔の受診率は4割弱しかないそうです。「恥ずかしい」「治療をうけるほどではない」などの理由で病院にいくのを敬遠する人が多いんですね。しかしそれだと大腸がんなどの"より重大な病気"を見逃してしまう可能性があるわけで、そう考えるともはや恥ずかしいとか言ってる場合ではありません。まずは診察を受けて「何が原因なのか」をハッキリさせましょう。 

3. 治療法の選択はちゃんと自分で考える

診察を受けて痔であることが分かったら、次に痔の種類(痔核、切れ痔、痔瘻(じろう)など)やその進度を考慮して、手術で治すのか、それとも保存療法でいくのかを決めます。

このとき気をつけるべき点は、この治療法の選択を医師と相談しつつ自分でもしっかり考えなければならないということです。

例えば私の知り合いの場合、痔で初めて病院に行ったときにはすでに内痔核がかなり進んだ状態で、医師に「手術と10日間の入院が必要です」と言われました。しかし仕事の都合上、10日も入院してるわけにはいかない。困った彼は自分なりに痔のことを調べた結果、日本は欧米と比べて痔を手術する率が高いことを知りました。つまり欧米ではあまり手術はせず、保存療法で治療することが多いということです。その後他の病院に行き、そこで「なんとか保存療法で治したい」と医師に相談した結果、医師に痛み止めの処方と生活指導をしてもらいました。今ではもうほとんど気にならないレベルまで改善しています。

痔は手術するかどうかの判断が医師によってまちまちです。よって必ず「なぜ手術が必要なのか」「保存療法ではいけないのか」など納得がいくまで医師に質問しましょう。医師には患者がちゃんと納得してから治療を行わなければならないという「インフォームド・コンセント」の義務があります。患者は質問することを決して遠慮してはいけません。

4. 現在の痔の手術は痛みが小さい

数十年前は痔の手術というと「ホワイトヘッド法」や「腐食剤注射療法」など、激痛を伴う方法が主流でした。これによって、「痔の手術はとても痛い」という認識が未だに世間に残っているようです。

しかし現在は技術が進み、「ICG併用半導体レーザー療法」や「結紮(けっさつ)切除半閉鎖法」など、痛みをほとんど伴わない方法が主流になっています。ですからもし痔の手術をすることになっても、痛みを心配する必要はないと思います。

 

5. 水溶性・不溶性食物繊維を意識して摂る

痔を保存療法で乗り切ると決めたら、医師のアドバイスに従って生活習慣を正すことで治していきます。ここからは例として、私が実際に行った生活習慣の改善について書いてみたいと思います。

まず、個人的に最も効果があったと感じたのが食物繊維の摂取です。

痔の最大の原因は「便秘」「下痢」です。便秘は硬くなった便が肛門を傷つけますし、下痢もあの勢いの激しさによって粘膜を傷つけ、炎症を起こす原因になります。その便の状態に非常に大きな影響を与えるのが、食物繊維なんですね。

食物繊維には水溶性と不溶性があり、水溶性は便を柔らかくし、不溶性は腸管を刺激して排泄を促進します。両方とも重要です。

水を飲むと便が柔らかくなると考えがちですが、実は口から入れた水は腸が吸収してしまうので、なかなか便は柔らかくなりません。しかし食物繊維の中の水分は腸に吸収されにくい性質を持つため、便を柔らかくする効果も大きいのですね。

水溶性食物繊維を多く含む食品はこちら、不溶性食物繊維を多く含む食品はこちらです。

松生クリニックの松生恒夫院長は著書「排便力をつけて便秘を治す本」の中で、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を1:2の割合で摂ることを薦めています。自身の行った実験において、水溶性食物繊維7g不溶性食物繊維14gの割合が、排便において最も良好な結果が得られたのだそうです。

6. ビフィズス菌を増やす

腸内には善玉菌と悪玉菌があります。悪玉菌が増えると便秘・下痢が起きやすくなるため、善玉菌であるビフィズス菌を増やすことは痔を治療するためにとても重要です。 

ビフィズス菌は食物繊維やオリゴ糖、乳糖を摂ると増えます。オリゴ糖は大豆やごぼう、たまねぎ、にんにく、バナナなどに含まれますが、量が少ないため、市販のオリゴ糖を利用するのも一つの手です。乳糖はヨーグルトなどの乳製品に多く含まれています。

7. 香辛料とアルコールは痔を悪化させる

トウガラシやコショウなどの香辛料はほぼ体内で吸収されずに排出されるのですが、その際に香辛料の刺激成分が肛門を刺激し、それが炎症の原因になってしまいます。アルコールもやはり炎症を起こす成分なので、香辛料とアルコールが好きな人は痔の治療中はできるだけ控えるようにした方が賢明です。

8. 排便の時間を決めつけない

排便は毎日規則正しく行えれば一番いいのでしょうが、現実にはそうはいかない場合もあります。食べるものは毎日違いますし、運動量や睡眠時間だって微妙に変わりますから、いつも同じ時間に便意がくるとは限らないんですね。よって排便の時間にはあまり神経質にならない方がいいかもしれません。あくまで便意が来たらトイレに行く。そうすれば、トイレに長居して肛門に余計な負担をかけるということも無くなります。

9. 排便後はできる限り丁寧に洗う

排便後はできる限り清潔にします。家にいる場合、トイレにウォシュレットがついていればそれで丁寧に洗い、もしついていなければシャワーで洗うとよいでしょう。石鹸やボディソープは刺激が強すぎる可能性があるため、使わなくてもよいといわれています。出先ではウォシュレットがついてないトイレでも大丈夫なように携帯おしり洗浄器などを使うのもよいでしょう。

10. ずっと座りこまないようにする

特に仕事がデスクワークである方は注意が必要です。何時間も イスに座りっぱなしだと肛門の血行が悪くなり、痔が悪化します。それを防ぐために、30分~1時間に1回は立ち上がり、肛門の血行をリセットするようにするとよいでしょう。